- 糖尿病外来 -
糖尿病とは!?
食品に含まれる炭水化物や糖質が、消化・分解されてブドウ糖となり、人間が活動するためのエネルギー源として使われる訳ですが、この血液中のブドウ糖が増えすぎて、尿に糖が出る病気が糖尿病です。
ブドウ糖が体内で利用されたり、貯蔵されたりするには、インスリンという膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンの働きによって血糖値は正常に保たれています。このインスリンが不足したり(インスリン分泌不全)、働きが悪くなる(インスリン抵抗性)ことにより、血糖値を正常に保てなくなり糖尿病を引き起こします。食生活の乱れ、運動不足、肥満、遺伝的素因、ストレスの蓄積などにより、膵臓の機能を低下させ、高血糖を引き起こし、糖尿病を発症します。
糖尿病の怖い合併症
糖尿病で怖いのは、さまざまな合併症が全身にあらわれることです。中には生命の危険を脅かす病気もあります。昔は“カゼは万病のもと”と言われていましたが、最近“糖尿病は万病のもと”と考えられています。糖尿病に特有の合併症として多く見られるのが、「糖尿病網膜症」、「糖尿病性腎症」、「糖尿病性神経障害」で三大合併症と呼ばれます。また、脳卒中(脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血)、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、閉塞性動脈硬化症(下肢の潰瘍・壊疽、切断)など生命に関わる病気も起こります。
糖尿病の三大合併症
糖尿病性神経障害
知覚神経や自律神経に障害が起こり、手足の感覚が鈍くなったり麻痺するほか、排泄障害や消化器症状などが起こります。
糖尿病性網膜症
網膜に異常が起こる病気で、視力の低下、失明をもたらします。
糖尿病性腎症
高血糖が10〜15年続くと、腎臓に血管障害や膜に変化が起きてきて濾過機構が破綻する病気です。腎不全に至ると人工透析を要します。
合併症を引き起こすもの
空腹時血糖 | 130mg/dl 未満 |
---|---|
食後2時間血糖 | 180mg/dl 未満 |
HbA1c | 7.0mg/dl未満 |
糖尿病の合併症を引き起こさないようにするには、まず血糖コントロールをしっかりすることが大事です。ところが、最近の研究から高血糖で生じる「AGE(=Advanced Glycation End-products)」が糖尿病合併症を引き起こすが分かってきました。AGEとは“終末糖化産物”と呼ばれるもので、高血糖が続くことで身体を構成しているタンパク質に糖質がくっつき、付着した糖質の一部は変性して「アマドリ化合物(変性ブドウ糖)」となり、このアマドリ化合物と糖質が結合するとAGEが生まれます。
アメリカの疫学検査で、HbA1c値が良好になるように日々の血糖値を厳しくコントロールさせたグループ(強化療法)と、ほどほどのコントロールを求めたグループ(従来療法)に分け、6.5年間調査をしたところ、強化療法グループには合併症が少なく、従来療法グループには多くの合併症が見られたということでした。その後4年間、両グループとも厳しい血糖コントロールをしてみたところ、強化療法グループでは合併症は相変わらず少なく、後から厳しくコントロールした従来療法グループでは合併症の発症を抑えることができないことがわかりました。
さらにその後6.5年の調査の結果、従来療法グループでは、強化療法グループに比べて心筋梗塞などの心血管イベントが多いことから、最初の6.5年の高血糖がその後10年以上経っても悪影響を及ぼす“高血糖の記憶”となり「過去の高血糖のレベルとそれにさらされた期間が記憶として身体に残り、糖尿病の合併症を進める」という考え方で、高血糖の時にブドウ糖がコラーゲンなどのタンパク質と結合して体内で形成されたAGEが消えることなく体内に残っているということです。
AGEによる様々な害
血管にあるコラーゲンの弾力がなくなるために動脈硬化を起こす
コラーゲンを貪食したマクロファージから増殖因子が分泌され、
コラーゲンを蓄積させることで腎障害を起こす
コラーゲンを蓄積させることで腎障害を起こす
脳の老人班にAGEがたまりアルツハイマー型認知症を起こす
骨のコラーゲンもAGEによりぼろぼろになるため骨粗鬆症を起こす
肌のコラーゲンに架橋形成作用を起こし、しみ・しわの原因になるなど
AGEを貯めないために注意する4つのこと
AGEのもととなる血中ブドウ糖量を減らす(糖質を制限する)
AGEを多く含む食品をなるべく摂らないようにする(焦げたものは食べない)
タバコの煙を吸わない(副流煙でもタバコの煙は30分でAGEを増やす)
酸化ストレスを受けない(酸化ストレスにより活性酸素が発生しAGEとともに
老化を促進するので、激しい運動や紫外線を浴びないなど活性酸素を少なくする生活を考える)
老化を促進するので、激しい運動や紫外線を浴びないなど活性酸素を少なくする生活を考える)
糖尿病の治療法について
糖尿病の治療として食事療法と運動療法、及び薬物療法(経口血糖降下薬、GLP-1アナログ注射薬、インスリン注射製剤)があります。糖尿病患者には肥満や太り気味の方が多く、それまでの食べ過ぎや運動不足が原因として大きく関わっており、ダイエットが必要です。適度な運動はブドウ糖の消費を促し、血糖値を下げる効果を期待できます。
それでも血糖のコントロールがうまくいかなかった場合は、のみ薬やインスリン注射が必要となります。最近は、DPP-4阻害剤やGLP-1アナログ注射薬も増えて病態に応じた治療が可能になりました。
1.食事療法
カーボハイドレート・カウンティング(略してカーボカウント、炭水化物15gを1カーボとする計算法)による糖質制限食をお勧めしています。カロリーではなくカーボという考え方で血糖コンントロールをします。厳しい糖質制限をする必要はありませんが、炭水化物を減らせば血糖値は上がりにくいことを利用した食事療法です。例えば、ステーキ(牛サーロイン肉130g)は500kcalありますが、炭水化物は7gなので0.5カーボ、ごはん200gはカロリー336kcalですが、炭水化物が74gなので5カーボとなり、血糖値はごはんの方が上がります。だから、肉や魚を食べても、アルコールは飲んでも大丈夫で、いかに炭水化物を減らすかが重要です。
2.食事療法
血糖値が上がってくる食後すぐから20~30分ほど運動(ウォーキング、腕たせ伏せ、足踏みなど)すると血糖値は上昇しないことが分かっています。または、ジョギングなどの運動をすると運動後36時間にわたって血糖値を低く保つことができるということも報告されています。さらに、週2~3回程度の運動にてインスリンの感受性(効果)を高めることができると言われています。運動ができない人でもNEAT(Non Exercise Activity Thermogenesis ニート)という“運動以外の日常の活動で消費される代謝熱量”を増やす(例えば、座るより立つ、エスカレーターより階段を選ぶ、大股で正しい姿勢で歩く)ことなどで消費カロリーの増大が期待され、トータルの運動量が同じであれば小分けにしても同等の効果があります。
3.薬物療法
経口血糖降下薬として、スルホニルウレア剤(SU剤)、ビグアナイド系、インスリン抵抗性改善薬、食後過血糖改善薬(αグルコシダーゼ阻害薬)、速効型食後血糖降下薬(グリニド系)、DPP-4阻害薬やSGLT2阻害剤の7種類の内服薬やGLP-1アナログ注射薬、インスリン注射製剤があり、病態に合わせてオーダーメイド治療を行います。また、現在のインスリン注射針は35Gとかなり細く注射をしても痛くありません。
※当院では専門医による外来でのインスリン自己注射の導入も行っています。
糖尿病治療法の流れ
1
問診票記入
初診の方は問診票にご記入いただきます。
2
検査
・検尿 ・血糖値測定 ・糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)
(検査時間:10〜15分、結果判定まで10分程度)
3
診察
診察室にて医師の診察があります。
問診票と検査結果を照らし合わせ、食事療法(糖質制限)を基本に、運動療法、内服・インスリンなど今後の治療方法をお話していきます。きさぬきクリニックではインスリン自己注射の患者様には「自己血糖測定」による自己管理をお薦めしています。詳しくは医師や看護師にお尋ねください。
4
会計
お薬を受け取り、ご会計が済めば終了です。
次回の診察のご予約があればお伺いします。